Jan 6, 2017

食事用冷凍パンを生んだひと スタイルブレッド代表取締役『田中知』(後編)

パンを生む場所・パンを生むひと from 桐生 vol.1

 

スタイルブレッド本社がある群馬県桐生市から、製造現場やつくり手の声をお届けする、こちらの企画。初回は、スタイルブレッド代表取締役・田中知社長へのインタビューです。「田中製パン所の4代目」として生まれ育った田中社長に、転機が訪れた前編。後編では、その後の冷凍パン誕生秘話や、パンへのこだわりまで、スタイルブレッドの「軸」となる部分をみなさんにご紹介します!

 

 

「うまいパンは冷凍してもうまい」

 

●ご自身でつくったフランスパンが、一流レストランのシェフに認められたこと。それをきっかけに、気合が入ったわけですね!

そうですね。そしてその後フランスの有名料理店やホテルを巡ったり、アメリカの研修ツアーに参加したりして、見えてきたことがたくさんあったんです。「おいしい!」と思うパンは、やはり天然酵母を使っていて、低温でじっくり寝かせた生地を使っているのが常識でした。そして、スーパーの惣菜コーナーのとなりに冷凍の食事パンコーナーが設けられていたんです。そしてその冷凍パンが、これまでの概念を覆すくらいにおいしかった!びっくりしました。そのときの「“冷凍”は、品質を落とすものではなく、品質を保持するためのもの。まずいパンを冷凍するからまずくなる。うまいパンは冷凍してもうまいんだよ」という言葉は、わたしにとってかなり衝撃的でしたね。

 

●確かに日本では食事パン自体があまり売られていないですし、冷凍パンも見ないですね。

そうでしょう?でも、ホテルのビュッフェや結婚式場などで出てくるパンは、ほとんどが食事パンだし、冷凍パンですよね。だけど、ふつうのパン屋さんでは1日に作れるパンの数は限られているし、群馬近郊ではおいしい食事パンがなかなか手に入らず、ホテルや高級レストラン、結婚式場などが困っているという話はもともと聞いていました。群馬で困っていることは、他地域でもきっと困っているんじゃないか、とも感じていました。そこに、フランスで食べたおいしい食事パンと、アメリカで見た冷凍パンが浮かびました。自分がもともと大好きだった食事パンを、よりおいしくこだわったものに変えて、冷凍して流通させればよいのでは?と。

 

桐生酵母・低温長時間熟成でつくる、冷凍パン誕生

 

●ついに「食事用冷凍パン」の誕生ですね!その後は順調に流通したんですか?

最初はなんとなく地元から攻めようと、北関東のホテルやレストランに飛び込みで営業してたんですよ。試食品を持っていって。でも、大体断られるんです。そのときの言葉は大体いつも同じ。「おいしいけどうちは東京じゃないから、こういうパンは好まれないんだよなあ……」でした。何度もそう言われて断られて、気づいたんです。じゃあ、東京に行けばいいや、と(笑)その後都内の食事1万円以上の高級店をメインに営業し、どんどん注文が来るようになりました。それまでは、1000円のビュッフェも1万円のコースも、パンはどこも大体同じものを使っていたんですよね。ほかの素材には違いを出すのに、パンはいっしょって、おかしいと思いませんか?

 

●確かに…!まさに、盲点をついていたのですね!でも、冷凍パンならではの大変なこともあるのでは?

そうですね、今では1日に10万個以上のパンをつくっていますが、天然酵母でありながら、通年一定の味や香りを保つ必要があります。なので、専用の培養室をつくり、酵母は徹底的に管理しています。また、フランス産小麦をベースに、国産100%の小麦をブレンドし、冷凍→解凍の手順を経ていっそうおいしくなるように微調整してあります。小麦はローストしたものを少し混ぜることによって、より香ばしさが増すんですよ。……って、こんなことまで言っていいのかな?(笑)

 

●ぜひ今度工場見学などもさせてください!専用の培養室でうまれる酵母、というのも気になります。

ここで生まれる酵母を、「桐生酵母」と名づけています。おいしいパンをつくるためにしていることって、どのパン屋さんも大体いっしょだと思うんですよね。そんななか、うちのパンのおいしさのワケを辿っていくとしたら、この桐生の自然環境にあるんじゃないかな、と。桐生の、風と水。これがパンづくりに適しているんだと思います。

 

●スタイルブレッドの食事用冷凍パン、一般の方々にはどのように楽しんでほしいですか?

食事といえばご飯、というご家庭も多いと思うのですが、そこに「パン」という選択肢もぜひ入れてほしいですね。選択肢が広がることで、生活が豊かになると思っているんです。うちのパンは、「パンを食べている」という意識にならない、軽めのパンです。しかも、冷凍保存できて、焼きたての味を楽しめます。「食事をしながら、おしゃべりをしながら、ついつい食べちゃった!」と、言ってほしいものです。

 

「わたしも毎日パンは嫌だけど、たまにはシチューにパンとか、ワインとチーズとパンとか、そういう日があってもステキだよね?」と言う、田中社長。パンが好きなのはもちろんですが、元職人である田中社長がそれ以上に好きなのは、パンがあるおいしい食卓を想像すること、パンがある楽しい食事のひとときを思い浮かべることなのだと感じました。その「想像」は今や「創造」へと変わり、遠く離れた地域でもおいしいパンで食卓に華を添えられるよう、日本全国を奔走しています。

 

 

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ライター 岩﨑未来(Mirai Iwazaki)

鹿児島県出身。2児の母。

都内の大学卒業後、編集プロダクションや出版社に勤務。

第一子出産と同時にフリーランスに転向し、夫の故郷である群馬県に移住。

現在ふたりの子どもを育てながら、フリーライター・編集者として多忙な日々を送っている。

 

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